令和元年度 大分三愛メディカルセンター 病院指標

外科で最も多いのは鼠径ヘルニアです。一般的には小児疾患のイメージが強いかもしれませんが、当院では１５歳以上の鼠径ヘルニアに対する治療が40件で平均年齢も60.95歳と高くなっています。また2位は胆のう炎・胆囊結石等に対して腹腔鏡下胆囊摘出術を行う入院です。当科では急性胆のう炎を発症している場合、入院後早期に摘出術を行い、入院期間の短縮を図っています。また消化器疾患を中心に悪性疾患から良性疾患までを診断し、治療にあたっています。内視鏡的切除、腹腔鏡下切除から拡大手術まで、症状に応じて治療を実施しており、腹部、外傷、急性腹膜症や緊急手術にも迅速に対応しています。

内科では誤嚥性肺炎が最も多く、平均年齢は87.1歳と、主に高齢の患者さまが治療を受けられております。肺炎は重症化しやすく、入院期間が長引く傾向にあるため当院では平均在院日数の長期化に繋がっていると考えられます。現在内科は呼吸器内科、循環器内科、糖尿病、リウマチ内科、消化器内科など様々な分野に分かれています。そのため、患者さまにとって最も適している分野の医師が様々な疾患に対応できるよう、体制を整えています。

整形外科では股関節・大腿近位の骨折に対する手術症例や胸椎、腰椎以下骨折損傷（椎体骨折）が多く高齢の患者さまが多いことが分かります。高齢者は様々な合併症を有していることが多く、長期臥床を避ける為に早期手術を心がけ、他科と連携しながら治療にあたっています。また早期リハビリテーションを介入することで退院後の生活に向けた調整にチームで取り組んでいます。なお、患者さまの状況に応じて回復期機能のある病院へ転院することもあるため、他の診療科に比べて転院率が高くなっています。

脳神経外科では脳梗塞が最も多く、発症3日以内で、処置2　4（エダラボン使用）という治療が多く行なわれています。エダラボンは脳保護剤です。また、Rankin Scaleとは脳血管障害だけに限定したADLの評価法で発症前は0、1又は2の軽度の障害であった患者さんの脳梗塞を多くみています。脳梗塞は経過時間とともに後遺症が現れてくるので発症から治療を開始されるまでの時間が非常に重要です。当院では24時間ＣＴ，ＭＲＩ撮影出来るなど救急体制を万全に整えており、早期発見・早期治療に取り組んでいます。また急性期からリハビリを介入することで、社会復帰にかかる期間の短縮や予防改善を促進することができます。

当院の泌尿器科では、尿路性器腫瘍・感染症、腎不全、結石等、ほとんどの泌尿器科疾患を扱っています。最も多いのは尿路感染症で、当院が体外衝撃波腎・尿管結石破砕術（ESWL）を有するため結石に関連する場合も多くなっています。毎週水曜日には排尿ケアチームによる全入院患者さまを対象に排尿管理を行なっており、下部尿路機能の改善に積極的に取り組んでいます。3位の誤嚥性肺炎については、当科かかりつけの患者さまが入院時どこからの発熱かはっきりしない場合、当科に入院して治療を行なうため、件数も増えております。

消化器内科で最も多い症例は、胆石や胆管炎といった胆道疾患です。症状としてはどちらも腹痛や背部痛があり、細菌が増殖すると胆管炎となって高熱が出る場合もあります。敗血症ショックになることもあるため、緊急を要します。当院ではERCP（内視鏡的胆管膵管造影）検査を行って、診断から手術（内視鏡ステント留置術や乳頭切開術、結石除去術）、治療までを一貫して迅速に対応しています。検査や治療に対して多職種のスタッフがチームとして携わっており、早期発見・早期治療を目標に対応しています。

救急科では前庭機能障害が最も多く、いわゆるめまい症（三半規管の障害によるもの）です。その他、上尿路疾患や頭蓋頭蓋内損傷と幅広い疾患の治療に対応しています。地域の方々の病気や怪我、交通事故等に対応し、平日の診療時間中は様々な疾患に対応できるよう整形外科、消化器科、脳神経外科、外科、内科、泌尿器科、麻酔科医師のバックアップ体制を確立しています。また当院ではDMAT（災害派遣医療チーム）が大規模災害や事故などが発生した際には外因的な傷を負った重症患者さまに対して現場に出向き、治療を行っています。また、除細動器や人工呼吸器、検査装置などの医療機械を搭載し、医師や看護師が同乗するドクターカーは、内因的な重症患者さまに対しても、同様に現場へ出向いてより早く治療を開始することで救命率を上げることができます。

当科では、胆嚢摘出や虫垂切除の件数が最も多く、腹腔鏡下で行われることがほとんどです。鏡視下手術とは、内視鏡をお腹や胸に入れて、モニターを見ながら手術を行います。一般的な外科的手術のようにお腹や胸を切らず、小範囲の切開だけで治療を行うので、患者さんの身体的負担が軽く、術後の回復が早くなり、入院期間の短縮と早期に社会復帰できることもメリットとなっています。虫垂切除は、ほとんどの症例が緊急手術となり、当日に手術を施行しています。また、急性胆のう炎や消化器がんについては、消化器内科との密な連携体制を整えており、術後は多職種のスタッフが関わることで早期離床を勧め、患者さまの退院後のQOL（quality of life 生活の質）向上を目指しています。

当院で行われる整形外科手術で最も多いのが骨折観血的手術です。その中でも大腿骨の手術が多く行われています。2位の人工骨頭挿入術は大腿骨頚部骨折の際、骨頭の温存が困難な場合や股関節の変形で骨頭を保存しての治療が難しいときに金属の骨頭に入れ替える手術の事を指します。また、関節窩側にも破壊、変形などがある時に骨頭側と関節窩側の両方を入れ替えて再建を図る手術は人工関節置換術といいます。当院ではその他、脊椎の慢性変形疾患に対しても、脊椎手術を行っております。

脳神経外科では、脳血管障害、脳腫瘍、機能性神経疾患、頭部外傷等多岐にわたり治療を行っております。慢性硬膜下血腫に対する穿孔洗浄術が一番多くなっており、高齢の患者さんの割合が高く緊急での手術となることが多いです。また当院では脳血管内治療専門医が在籍しておりカテーテルを用いた脳血管内治療を行っています。脳血管内手術は開頭術にくらべ手術時間や入院期間の短縮に繋がり術後の回復状態がよいことがメリットとしてあげられています。超急性期脳梗塞に対し脳血栓を除去する経皮的脳血栓回収術が上位となっております。重症痙性麻痺治療薬髄腔内持続注入用植込型ポンプ設置術は髄腔内バクロフェン髄注療法（ITB療法）の際の術式で、この治療法は脳卒中、脳脊髄外傷、神経変性疾患、脳性麻痺などによる痙縮に対し、バクロフェンを脊髄髄液腔内に持続的に注入し、患者さんの痙縮を緩和し、日常生活の改善を得ることができます。また、この治療法はリハビリが重要であり、他の医療機関との連携も強めているため、転院率も高くなっております。

泌尿器科で最も多い手術は、早期に内視鏡で発見された浸潤性でない膀胱癌に対する経尿道的膀胱悪性腫瘍手術です。次に体外衝撃波腎・尿管結石破砕術です。体外衝撃波腎・尿管結石破砕術（ESWL）は、当院では2012年9月より導入し、自然排出できない大きな結石を体の外側から衝撃波を結石にあてることによって、体の組織を傷つけることなく、腎結石・尿管結石の治療を行っています。手術に関してはできるだけ侵襲の少ない治療を行い、早期退院できるよう、診療にあたっています。従来の各種泌尿器科癌の検査・加療に加えて、女性泌尿器科医師を迎えて外来や手術を積極的にすすめており、21年度は更に手術等が増えています。

消化器内科では、消化管のポリープや早期癌に対して内視鏡的粘膜除去術が多く、またＥＲＣＰ（内視鏡的胆管膵管造影）を用いて内視鏡的胆道ステント留置術や結石除去術などが多く施行されています。内視鏡的ステント留置術は良性胆道狭窄や悪性疾患に対する一時的な減黄処置としても行われますが、高齢者や手術不能な方、悪性胆道狭窄に対する永久的な胆道ドレナージ法としても有用されています。胆汁が腸管に流れることから生理的であり、日常生活の制限がなく、早期の自宅療養が可能となるメリットがあります。当院は2016年5月に内視鏡センターを設立し、積極的に内視鏡検査や治療を行っており、外科と密な連携を取ることで、消化器疾患の診断から治療までの一貫した対応を患者さまの状態に合わせて行っています。